◆素材としての塩ビ樹脂について−1 【2008/10/30】
塩ビ樹脂素材を使用する事についての環境スタンス

■ラベル素材としての塩ビ樹脂
表示プレートやステッカーラベルでは使用箇所やその用途に応じてさまざまな素材が使用されますが、おもに屋外用途など耐水性・耐久性を前提としたステッカーでは、紙素材ではなくいわゆる「フィルム系素材」と呼ばれる軟質のプラスチック(合成樹脂)フィルムを素材とします。

同じ石油を原材料とするプラスチックフィルムでも、塩ビ樹脂・PET・ポリエチレン・ポリプロピレン・合成紙など材質によってそれぞれ利点が異なるため、使用の目的に応じて使い分けられます。

当社では屋外用ステッカー素材のほか耐候性ラミネートフィルム、カッティング文字などの素材フィルム(マーキングフィルム)として「塩ビ」(すなわち軟質塩ビ樹脂)製フィルムを使用する事が多く、これは印刷加工性が良い事に加え長期の耐久性や難燃性に優れ、また省資源でもある事が有用性の理由に挙げられます。

■塩ビ樹脂が害悪か?
塩素を含む塩ビ樹脂は、主に90年代にはこれらがさまざまな環境破壊の原因、または有害な物質であるとして代替品への切り替え・排除が推奨された時期がありました。

今日では「塩分などの塩素原子を含む物質全般がダイオキシンの発生条件となる」という事から処理施設の改善も為されており、また添加可塑剤であるフタル酸エステルの環境ホルモン作用が公式に否定されるなど、「塩ビ樹脂が環境破壊の原因となる」という認識は是正されてはいます。しかしながら当時のセンセーショナルな報道に比べればこれらが一部には認知されていないという所が現状のようです。

実際のところ「塩素を含まない"環境に優しい"素材」といった表記はよく見かけますが、一部では塩ビが「有害」・「安価で粗悪」な材料であるという理由を加えて脱塩ビPRを行っているとも聞き及んでおります。

しかしながら(実際に環境対応を目的として素材の性質や現状に注視されている方々には周知のことかも知れませんが)あらゆる素材は、結果的にそれぞれ異なる形で環境負荷を生じさせ、その一方である特性に優れるものです。
当社では必要上発生する環境負荷を"軽減"すべく「用途と使用サイクルに適した素材を選定する」事こそが重要と捉えています。

当社なりに素材の性質について検討し、廃棄・回収過程までをシミュレートしましても現状は「目的によって塩ビ樹脂の使用が適している」と判断されます。
加えて、同じ(=長期の耐久耐候性が要求されるという)目的で塩ビパイプや塩ビ電線被膜が使用される
という箇所に対して、これにあえて「脱塩ビ素材」のステッカーを使用する事の必然性そして更にそれを分別回収して燃やす事の現実性も些か理解できかねます。

つまり「燃やす事ができる素材」を枯渇資源たる石油で生産し、消費・燃焼させる事自体がCO
2削減のうえで本来好ましくなく、素材の適性とは「消耗品」と「耐久用途品」の違いによっても考慮されるべきものです。
長期使用が目的であれば、生産・回収・リサイクル(勿論塩ビ樹脂もリサイクル可能ですが)にエネルギーを頻繁に消費するよりも、まず「省資源で長期間使用できる素材」である方が良いはずです。

■素材の選定と利点
塩ビ樹脂のそもそもの特性や、また実験や調査が進むにつれ判明した環境汚染などの原因・実状とそれら最新データについては、業界団体が中心となりその周知に尽力されておりますので、詳細はそちらをご参照いただきたく存じます。(とはいえ「塩ビ=有害」論が他方で安易に流布されつづけてているというのも現状ですが)

もっとも、当社の目的は塩ビ樹脂の需要を促進する事でもなく、「用途に適した、安全性が高く環境負荷の少ない素材」を選択する事ですが、そもそも塩ビ樹脂は頻繁に使い捨てされる箇所ではなく、長期のライフサイクルを要求される用途において使用されるものです。
その観点から検討しましても塩ビ樹脂素材の以下の利点を重視すべきと判断いたします。

@難燃性であり、物質特性が安定している

A耐候性に優れ、耐久期間が長く省メンテナンス性である

B印刷加工性がよく、ステッカー製造上の工程や副素材を削減しやすく、最低必要数量のみを低コスト・短納期で製作できる

C組成の60%が工業塩から得られる塩素であるため、原材料の原油依存度が低く省資源である

反面、
「燃やす」と酸性ガスである塩化水素(塩素ガス“Cl2”ではなく“HCl”が発生する、またそのため焼却処分時には適切な焼却設備で処理をする必要があります。

■利点と欠点の相互性
しかしながら メリットとデメリットは総合的な状況から判断すべきものです。

「非塩素系のプラスチック」は燃焼時に「塩素系の有毒ガス」は発生させませんが、本来プラスチック全般はむやみに野焼きにするものではなく、実際に不適切な燃焼方法および火災時においてはその他のプラスチック・物質からもそれぞれ異なる(概ね有毒の)有害煙が発生します。
塩ビ樹脂の燃焼時に発生する塩化水素も有毒・有害ですが、一酸化炭素等と異なり臭気による自覚性があり、そもそも塩ビ樹脂は塩素系樹脂全般の特長として他の素材よりも「燃えにくい」性質を持っており、発火・延焼などの危険性はプラスチックの中でもかなり低い部類に属します。

また原料に「塩素を含まない」樹脂はその反面、石油原料の依存度が大きくなります。
(※塩ビ樹脂は組成の60%が塩素のため石油由来原料の割合が約40%で済みます)
言い換えれば燃えにくく塩素を含む物質であるからには焼却処分は適切な焼却設備で行われる必要が生じるともいえます。


■焼却におけるダイオキシン問題とオレフィン系樹脂
ダイオキシン類の発生には「酸素」「炭素」「水素」に加えて「塩素」が必要条件となるため、塩ビ樹脂に含まれる塩素が不適切な低温燃焼などによりこれらと結びつきダイオキシン類の発生条件になるとされていますが、まず今日の焼却処理施設では高温で適切に処理し、また発生した有害物質を回収するよう改善が図られています

しかしこれは塩ビ樹脂に限らず、塩などの「塩素原子を含む物質全般」が塩素源となるために、生ゴミ等の焼却も適切に行う必要があるという事に加えて、そもそも大気中に微量な塩素が含まれているため、燃焼物質中の塩素量にほぼ関係なく、燃焼方法次第でダイオキシン類の発生につながるという事によるものです。
そして適切な処理方法によってダイオキシン発生量は2006年にはピーク時の30分の1以下、空気中のダイオキシン濃度は基準値の10分の1以下となっているというデータがあります。

従って、それ自体が塩素を含まない「オレフィン系の樹脂」も、まず塩素を含む一切の物質と別に焼却することが前提となり、そしてダイオキシン類の発生抑制には適切な施設・条件で燃焼させる必要が生じる事になります。

■環境への対応とは
もちろん当社では塩ビ樹脂についても完璧なものとしては捉えておらず、またオレフィン系樹脂やその他の素材を否定するつもりもありません。用途に応じてこれら素材は使い分けられるべきであり、消耗品としての書込ラベルなどは耐久性の低い紙素材の方が適しているといえましょう。

しかし前述のように素材の環境負荷は(天然素材も含めて)それぞれに性質が異なり、環境対応というものが本来使用方法に照らして「有毒・有害性」「省資源性」「廃棄処理」などのそれぞれの視野で捉える必要があるため、塩素含有の有無をもって「環境に良い・悪い」とすべきではありません。

塩ビ樹脂の「石油依存度が低く、長期耐久用途に適しライフサイクルが長い」という一面は環境面でも有効に活用されるべきかと思われます。

さて、当社ではあくまでも表示部材に使用する目的のうえでの適切な素材を検討しております。
そのため、用途によっては塩ビ樹脂の機能では適切でないものも生じます。

例えば機械彫刻銘板素材では回転摩擦熱に強いアクリル樹脂・ABS樹脂を使用しますし、剛性と軽量性を要求される類の標識板では、アルミ複合板などの複合材料が適します。伸縮性により曲面にも馴染ませやすい点は軟質塩ビ樹脂フィルムの特長ですが、すなわち逆に伸縮を嫌う箇所には別の素材も視野に入れることになる訳です。
(逆に言い換えれば、代替樹脂と呼ばれる素材に塩ビ樹脂特有の機能が必ず備わっている訳でもありません)

以後の本項では、塩ビ樹脂の一般特性以外にも、表示部材としての視点でとらえた軟質塩ビ・硬質塩ビとの耐候性の違いなども追記してゆく予定です。
2:塩ビ樹脂とは