◆素材としての塩ビ樹脂について−2 【2008/10/30】
塩ビ樹脂とは

■「塩ビ」という名称
言葉が示すように「原材料モノマーである塩化ビニル=クロロエチレン」をポリマー(高分子)化した合成樹脂のことであり、それを略して俗に「塩ビ」と呼ばれている訳ですが、重合という反応を経て、モノマーである「塩化ビニル」とは別の性質に変化させたものになっています。
従って本来であれば「ポリ」や「樹脂」を略した「塩ビ」という呼び方は、高分子化する前の原材料「モノマーである塩化ビニル(=クロロエチレン)」と混同しやすく不適切かもしれません。

モノマー(単量体)状態原材料の塩化ビニル”=すなわちクロロエチレンは、発がん性が指摘される有害な高圧ガス状の危険物質ですが、これと異なり多数の原子が結合されたポリマー(高分子)体の『ポリ塩化ビニル・塩化ビニル樹脂』すなわち“いわゆる塩ビ”は化学的に安定した無害な物質です。

本項では出典元資料に倣い、樹脂としての「塩ビ」を「〜塩ビ樹脂」・「塩化ビニル樹脂」とし、モノマー状原材料を「塩化ビニルモノマー」と表記します。


■組成と特徴
塩ビ樹脂は、石油から得られる「エチレン」と工業塩から得られる「塩素」を原材料としているプラスチック(合成樹脂)ですので、組成に塩素原子を含む事になります。
塩ビ樹脂を「燃やす」事により塩化水素が発生するのはこの塩素が水素と結びつくことによるものです。
   
●「塩素」原子を含むことについて
物質の有害性とは、含まれる元素そのものの単体性質ではなく、その分子構造や物質の様相により影響するものです。
単体状態の塩素(Cl
)や、これに水素(H)が結びついた塩化水素(HCl)は有毒性があり、塩化水素の水溶液は強酸性の「塩酸」ですが、塩素とナトリウムからなる塩化ナトリウム(NaCl)は、いわゆる食塩です。

塩ビ樹脂は原材料の大部分が塩素からなることにより、原材料の石油依存度が大幅に低いものとなります。
加えて、塩素を含むプラスチックの利点として他に「燃えにくい(難燃・自己消火性)」、「酸に強い(耐酸性)」が挙げられ、耐酸性があるという点は、大気中の酸素による劣化に強いことも意味します。

●可塑剤について
実際の塩ビ樹脂成型品には紫外線による脆化等を防止するため、ここに「柔らかく」するための可塑剤が添加されます。この可塑剤などの添加物次第で柔らかさなどの性質を自在に変えられるのも塩ビ樹脂の大きな特長であり、プラスチック消しゴム・合成ゴムやソフトビニール玩具・軟質フィルム等に見られる「軟質塩ビ樹脂」や、塩ビパイプなどの「硬質塩ビ樹脂」などの違いはこの可塑剤によるものです。

可塑剤として主に使用されるフタル酸エステル類の代表的なものに「フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)」=DEHPがありますが、DEHPは、「マウス・ラット等のげっ歯類に高濃度で投与した場合」に生殖毒性等が見られたことに基づき、安全性を重視して乳幼児の玩具・調理用手袋・食品容器等の分野においては使用が規制される事になりました。
(この異常の発現は、げっ歯類特有の現象とみられており、よりヒトに近いマーモセット等サルでの実験においては、これらの異常は検出されず、現状では人体への同様のリスクは少ないと推測されています。)

(DEHPはかつてこれが流出する事による生態系への(特に水生生物、魚類のメス化などの懸念として)内分泌かく乱作用いわゆる環境ホルモン作用があると疑われ、98年の「環境ホルモン戦略計画 SPPED’98」において「内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質」67物質の中に含まれましたが、2003年6月には環境省より、リストアップされたDEHP等9種のいずれの可塑剤についても、内分泌かく乱作用は認められないという調査結果が公表されています。)

(追記) フタル酸エステル類 「DEHP(CAS 117-81-7)」「DBP(フタル酸ジブチル:CAS 84-74-2)」「BBP(フタル酸ブチルベンジル:CAS 85-68-7)」はREACH規則による認可対象物質(附属書]W)、および認可対象候補物質(SVHC)のリストに含まれており、使用の認可や届出の対象物質となっています。
改正RoHS指令(「RoHS(U)指令」)では、現在の6種類の特定有害物質に追加予定となる4物質の中に、フタル酸エステル類 DEHP、DBP、BBPが挙がっています。

また、DEHP、BBP、DBPおよびDIBPの4つのフタル酸エステル類のうち、DEHPのみは内分泌かく乱物質であるとして EU05 SVHC Candidate Listの登録内容が改定され、JAMP管理対象物質(Ver.4.030)の改定内容へと反映されています。

なお、ここでのリファレンスは、塩ビ樹脂に関する基本的な特徴や性質のご案内を目的としています。
含有化学物質に関わる各規制の動向、および管理対象物質に対する最新情報などは、当該団体による発表資料をご参照ください。
1:塩ビ樹脂を使用する事の環境スタンス